公営プールの入れ墨タトゥー規制について

埼玉県の公営プールで今年から入れ墨、タトゥーを入れた人の入場を断っている。去年まではご遠慮いただくというお願いレベルだったと思ったけれど、今年はポスターや看板、チケットにまで大きく記載されたり、実際見つけた場合には注意をして締め出すようなことをしているみたいで、かなり積極的に取り組んでいる。埼玉県のサイトでも以下の注意事項があった。

県営水上公園プールは入れ墨をした方の入場をお断りします - 埼玉県ホームページ

入れ墨の是非はともかく、ここまでやるのはやりすぎじゃないのかと思う。公共の施設は県民が遍く利用できるのが原則だとすると、この措置は差別にはならないのだろうか?

そういうところが疑問に思って、埼玉県以外の公営プールはどうなっているか調べて見たら、佐久市のサイトで以下の記述を見つけた。

まず、プールの利用に関しまして、危険な行為や、他の利用者の迷惑になる行為等ルールを守っていただけない方については、直ちに注意・指導することを徹底してまいります。
 次に刺青(タトゥー)を入れている利用者について、近年、駒場公園プールを含め他のプールでも、「刺青」や「タトゥー」を入れている方が、ご指摘のとおり入場されております。
 しかしながら、法律で「公共施設においては、正当な理由がない限り、住民が利用することを拒んではならず、利用することについて不当な差別的扱いをしてはならない」と定められていることから、ファッションの多様化や国際化社会の中で刺青が文化として定着している国もあるため、「刺青」や「タトゥー」を理由に入場を制限することができかねます。
 他の利用者の方への配慮のため、駒場公園のプールでは、大きな「刺青」や「タトゥー」を入れている方へのラッシュガード(水着素材のTシャツ)等着用の協力についてお願いするなどの対応を行ってまいりたいと考えております。

http://www.city.saku.nagano.jp/cms/html/entry/5376/445.html

埼玉県とは違い、佐久市の対応の方が私の中では納得がいくものだった。ここでいっている法律は地方自治法の第十章 公の施設第二百四十四条第二項及び第三項のことと思われる。

第二百四十四条  普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。
2  普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。
3  普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

地方自治法

埼玉県はこの法律をどう解釈したのかわかないけれど、この法律を見ると入れ墨が公共施設から排除すべき正当な理由であるかどうかが争点になると思う。

歴史的に入れ墨が反社会組織である暴力団組織に関わるものが施しているものであった。また入れ墨を見せることで、背後に暴力団組織があることを臭わせて、人々は畏怖するという事実もある。(以下のブログエントリを参照しました 入れ墨、転入届け不受理など - 電突隊のための法令集)

そういうことが、入れ墨が単なる趣味嗜好の範囲で語られるものではないということなのだろう。

一方、最近では暴力団組織と全く関わりがない人でタトゥーや入れ墨を入れている人も増えてきているようである。でも、見た目で暴力団組織かどうか区別できないことや、まだまだ日本の社会ではマイノリティであることなどから一緒くたに排除しましょうという流れになったのだろう。入れ墨を快く思わない人が日本では大多数だし。ちょうど見た目では痴漢かどうかわからないから、女性専用車両を設けて男性全体を排除しようという考え方に似ている。

と勝手に考えてみたんだけれど、私としては、個人の好き嫌いで不当に差別を増徴することは、あってはならないし、ひとつの差別が次の新たな差別を正当化させてどんどん差別が広がる懸念がある(今の原発事故による風評被害も同じく)。
であるから、埼玉県の今回の措置はちょっとやりすぎのような気がすると思う。