「コクリコ坂から」

宮崎吾朗監督の「コクリコ坂から」を鑑賞。去年のジブリ映画「 借りぐらしのアリエッティ」は一緒に見たので、今回も子どもを誘ってみた。けれど反応が鈍く「ポケモンの方がみたい!」ということだったので、今回はひとりで見ることにした(妻はジブリ作品が嫌いなため元々誘わない)。

物語冒頭、主人公の女子高生の海が、下宿の朝食の準備を淡々とこなすシーンが繰り広げられる。これがテンポに緩急がないし表情もほぼ無表情である。でもBGMは可愛い感じで、何が言いたいのかいまいち理解できなかった。

また、カルチェラタン取り壊し騒動の顛末があっさりとしていたのもどうかと思った。最後あたりでもう一波乱あるのではと思っていたんだけれど、少々拍子抜けしてしまったよ。

ただ、全体の印象としては悪くは無かった。特にカルチェラタンの描写がよい。部室の雑多な雰囲気とか、生き生きとした学生たちの姿が心地よい。冒頭も含め全体的に演出は地味目なんだけれど、学生たちのシーンは結構アニメ的な描写(頭の上をジャンプして演台まで行くシーンとか)があったりしてメリハリがあって面白い。自分の中に眠るクラブ活動に精を注いだ高校、大学時代に感じていたスピリットが久しぶりに反応したなぁ。

物語の年代が1963年の横浜。時代も場所も全くリンクするところはなかったのでノスタルジーな味わいを感じることはほとんど無かった。ただ、カルチェラタン新聞制作に使っていたガリ版は、教員をしていた父親が仕事でよく使っていたので懐かしかった。今でも書斎で薄い半透明の紙に鉄筆でカリカリと細かい字を書いていた姿が目に焼き付いている。程なくして和文タイプや日本語ワープロに取って代わられたんだけれど、父親の姿とガリ版はセットで強く記憶に残っているなぁ。(何かもう死んだように書いているけれど、父は退職しましたが存命です)

そんなことも考えつつ、じんわりと心に残るよい作品だった。