「インセプション」

公開中の映画「インセプション」を見にいった。公開当初はあまり興味がなかったけれども、ツイッターなどで「押井監督ファンなら見るべし」と書いている人がいたり、押井監督自身も公式サイトでコメントを寄せていたりしていたので、これは見とかないといけないかもと思い見にいった次第。

押井監督的作品なら「現実と虚構の境界があいまいになる」とか「虚構の世界に閉じこもったままになる」とか「自分の認識次第で虚構も現実と同じ価値を持つ」みたいな退屈で難解なテーマが展開されるのではと思っていたんだけど、インセプションはそういうテーマを内在しつつ、退屈な映画とはなっていなかった。

特に感心したのは夢の多層構造や階層によって時間の進み方の違うなどの設定が独創的なことだ。それらの設定が上手くストーリーに組み込まれていて飽きさせない。またチームを組んで作戦を遂行し、各階層で各人それぞれが見せ場があるところも面白かった。上映時間は2時間を超えて長かったんだけど、特に後半は展開がスピーディーで引き込まれてしまった。

ただ設定を上手くいかしているというのは、裏返せば理路整然としすぎているということでもある。夢の世界を描いているわりには夢自体がきっちりとした世界で構築されていて、時間経過や空間移動が現実とほとんど変わらないのが違和感がある。もっと時間を跳躍したり、普通に武器で戦うんじゃなくて魔法使ったり架空のロボットに乗って戦ったりとかそんな突拍子な世界でもいいじゃないの?夢なんだし。

あと虚無の階層がいまいちよくわからなかった。強い薬を飲んでいて夢の中で死んだら虚無に行くというような設定だったと思っていたら、別に普通に変な機械を使って簡単に行けるみたいだし。もっと容易にアクセスできないところだと思っていたので。あと虚無の世界は他者と共有できているみたいだけど、サイトーさんとあうのは何十年もかかったような描写があるけど、御曹司の方は簡単に会えてしまったし。その辺の条件付けがよくわからなかった。

それから主人公が現実世界に拘り続けるのは、あまり共感できなかった。個人的には夢の世界の方が自分で好き勝手に構築できるし楽しく見えて退屈しないような気がするけどなぁ。一応子どもと会いたいってのが理由になってはいたけれど、それだけじゃちょっと弱いと思ったし。

と見終わってあれこれ考えると「あれはどういうことだろう?」とか「どんなルールだろう」なんて細かいところが気になったりするんだけど、こんな複雑すぎる構造の話を上手くまとめてそれでエンターテインメントにまとめていて楽しい作品であった。


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