映画「カラフル」

本日から公開の映画「カラフル」を観てきた。現世で罪を犯して死んだ魂が別の中学3年生の少年に「ホームステイ」させられる。その少年はある理由で自殺していた。その子は絵が上手なこと以外はさえなく、友だちも一人もいないし、母親は不倫しているし、気になる後輩は援助交際をしていた…

最初の魂の現実離れした設定を除けば、中学生の少年とそれを取り巻く友人や家族の心情を丁寧に描写しているごくごく現実的な作品であった。

まず原監督の前作「河童のクゥと夏休み」でも観られたように、何気ない日常風景の描写がすばらしい。「カラフル」では特に食卓のシーンが多用されていた。食事シーンをアニメーションで表現するのは結構大変なことだと思うんだけど、何種類も美味しそうに表現されていて作画ががんばっていたな。物語的にも食事シーンの様子から家族がばらばらだったり、反発し合ったり、一人母親だけが落ち込んでいたりとわかってくる。クライマックスまで食卓シーンだった。アニメーション作品としては何とも地味な舞台なんだけれども、父も母も無関心を装っていた兄までもが真のことを色々考えていることが見えて、感動的なシーンだった。このへんちょっと目頭が潤んでしまった。

家族以外では特に早乙女君がよかった。玉電廃線跡を巡るエピソードは、重苦しかった前半場面から一息ついてすがすがしい気持ちになれたし、真の気持ちがだんだんとポジティブになっていく様子が画面や背景からもよく伝わってきた。コンビニのチキンや肉まんを分けるシーンもほのぼのしていたし。ここもちょっとうるっときた。

そして、背景美術がすばらしかった。早乙女君と歩く多摩川の河原や玉電の白黒写真など実写と見紛うところが結構たくさんで印象深く、劇場の大画面でみても素晴らしいクオリティだった。この辺は演出的にかなりねらって作画していたみたいなので、もう一度劇場などでじっくり見直したいと思う。

今作品に関して、私の場合は自分を主人公に重ね合わせるというよりは、親の立場で中学生の多感な時期の子と向き合えばよいかそういったことを思い描きながら観ていた。正直難しいしこの作品を観たからといって答えが簡単に出るようなものでもないけれど。

作品としては地味だしシリアスで人によっては説教臭さを感じるだろう。でも鑑賞後はすがすがしい気持ちになった。作品としては「河童のクゥ」の方が好きだが、今年の夏に見た映画で一番でやはり原監督はすごいと思わせる作品だったよ。

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